北京オタクな旅2

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●オールドスタイルのチャイナドレスを仕立てる  
 今回の旅の目的の1つに、チャイナドレスを仕立てるというのがありました。
 実は昔、生活していたときも、1着仕立てたのですが、20数年たった今、太ったために入らなくなって(笑)しまったんです。そこで、今回、ぜひ新しいのを作ろうと思いました。
 その、仕立てる場所ですが、昔は、いたるところに、仕立て屋さんというのがあったのです。今なら、既製服があふれるほど売っていますが、昔はそうでなかったので、ほしい服は仕立てるというのが普通だったんです。しかし、時代は変わりました。いくつかの繁華街を見まわしても、日本と同じで、仕立て屋さんなんて見つかりません。これは、あらかじめ予想していたことでした。そこで、「前門」という下町エリアにある、1893年創業の、老舗のシルク店「瑞[虫夫]祥」に行くことにしました。ここは昔から仕立てもやっているのです。
 さて、肝心のデザインですが、袖は、昔ながらの“中式(中国式)”の袖にすることにしました。この“中式”とはどういうものかというと、今、私たちが着ている洋服は、前身ごろとうしろ身ごろを別々に裁ち、また、袖も別に裁ちますので、肩に沿ったところと、袖ぐりには縫い目があります。こうした袖は“西式(西洋式)”と言います。これに対し、“中式”は、なんと、前身ごろとうしろ身ごろ、また袖もつながっているのです。わかりにくいと思いますので、超おおざっぱですが、布の裁ち方の図を下に入れました。ものすごいおおざっぱな図ですが、これをエイっと二つ折りにするわけです。また、布の横幅は限られていて、長袖の場合は、この幅が足りませんので、袖は継ぎ足しをします。
 この袖が、中国の昔ながらの袖なんですが、現在売っている既製のチャイナドレスは、ほとんどすべてが、西洋式の裁ち方になっています。
 昔作ったときも、中式の袖で、筆者はこの袖がえらく気に入ってしまいました。なぜかというと、形としては、ドロ臭いんですが、日本で、「これが本物のチャイナドレスよ!」といって、袖のところを見せると、ものすごく驚かれて、ものすごくウケるんです!(笑)
 また、年々進む中年太り(笑)が、これからも続く可能性大なので、将来も着られるようにというのと、若い人ならいいんでしょうが、このトシになってあまり身体にピッタリしていても下品なので、全体にかなりゆるめに作ってもらいました。
 ただ、形は大満足だったのですが、布地は地味すぎて失敗でした。色黒の筆者が着ると、なんか、農家のオバサン風(笑)。チャイナドレスは、日本の着物にあたりますので、柄は派手なほうがいいそうです。
 また、若い方の場合、半袖ならまだいいのですが、長袖の場合、中式の袖はおすすめしません。どうしても、ダサい雰囲気になってしまうですよね。また、袖の形や長さにこだわらなければ、既製品がたくさん売っています。


袖が身ごろとつながっているのがわかりますでしょうか? T字型に裁ったものを着て、腕を下ろので、脇の下のところには皺ができます。→のところが袖の継ぎ目です。

写真が平面的になってしまったので、ウエストがかなりダブダブしていますが、実際はもう少ししまっています。
襟の下と、あわせのところには、別布で幅のある縁取りをつけ、袖口と両脇のスリットのふちには、細い縁取りをつけています。
スリットは腿の真ん中ぐらいまであります。歩くために、スリットの開き具合はほとんど決まってしまいます。襟の高さ、ボタン位置、襟のまわりとあわせの縁取りの形などはお任せにしました。
布地は絹。



前を開いたところ。つまり、着物のように、完全に前が開きます。とめるのは、中国式ボタン。脇はファスナーにすることもできますが、あくまでオールドスタイルにこだわったので、ボタンにしました。ただ、全部ボタンの場合、着るのに時間がかかります(笑)。このチャイナドレスの場合、ボタンは、全部で8個。ボタンとボタンの間はスナップになっています。

襟と袖の上部を上から見たところ、洋服では↓のところに前身ごろとうしろ身ごろの縫い目がある。

中国式ボタン


袖口とスリットの細い縁取り

●既製服のチャイナドレスを売っているお店
 北京でいちばんの繁華街、王府井に「王府井工美大厦」という、宝石や中国の伝統工芸品、シルク地などを売るビルがあります。有名なのですぐわかります。この3階にチャイナドレスのコーナーがあります。種類、サイズ豊富。残念ながら長袖のものはほとんどありませんが、チャイナドレスは、普通は袖なしか半袖を着ますので問題なし。なお、チャイナドレスは、中国語で“旗袍(チーパオ)”と言います。

●瑞[虫夫]祥(ルイフーシャン)
 
前門外大柵欄5号
 前門にある、老舗のシルク店。仕立ては2階。なお、オリンピックに向けての建て直しのため、今後、取り壊される可能性あり(2006年6月現在)。既製品のチャイナドレスがあるが、あまりパッとしない(笑)。中国語ができないと細かい希望の仕立ては難しい。カラーのデザインブックが置かれているので、そのなかから選ぶこともできる。
・上の写真のような、真一文字のボタンは“一字扣”
・襟のまわりとあわせにつけた幅のある縁取りは“辺”
・袖口につけた、細い縁取りは、“牙子”
というそうです。
 仕立賃はこのドレスの場合で500元(約7000円)、布地代は、約350元(約5000円)


袖の中央の位置で二つ折りにする。つまり、折ったあとの形はT字型になる。
   
 

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